トーチカ(根室市)

2022年8月2日火曜日

トーチカ 軍事遺構(北海道)

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北海道根室市の落石三里浜にある『落石トーチカ』、同じく根室市光洋町の『友知トーチカ』と桂木にある『桂木トーチカ』。3箇所6基のトーチカを写真でレポートします。トーチカなどの防衛陣地が築かれたのは太平洋戦争末期。戦況は序盤有利に進んでいましたが、ミッドウェー海戦での敗北以降、連合軍の反撃により徐々に劣勢となっていったため日本軍は連合軍の本土来攻を予想します。その後アッツ島の戦いに敗れアリューシャン列島を経由して千島列島から北海道に上陸するルートが現実味を帯びてきたため、『網走・根室・釧路・十勝・勇払』にトーチカなどの防御陣地を構築することが決まります。トーチカなどの防衛陣地は1944(昭和19)年夏~1945年にかけて膨大な費用と労力を使い築城されましたが、結局、連合軍に上陸されることはなく終戦を迎えました。

落石トーチカその1。構築時は崖の上に埋められていたものが、海食や地震による地すべりで落下してしまったようです。海側に天蓋、崖側が底部になっています。


すっかりバラバラになっています。左右に大きな銃眼を持つのが特徴のトーチカです。手元の資料によると連絡口はこちらの面にあり、銃眼は5角形の台座?に乗っていたようですが、現存するのは四角い筒だけです。


ここ落石三里浜は砂浜が硬く締まっているので、車での走行が可能です。落石の漁港から直線距離で3km程、往復6km、歩けば1時間コースなので車で行けるのは助かります。西側(手前)にある銃眼だけは、波に削られているのか角が取れ劣化が進んでいるようです。この銃眼の長さは5mと大きなものです。


銃眼がついていたであろう部分には玉石が見えています。このトーチカには鉄筋が使われていないため、落下によって簡単にバラバラとなったのでしょう。


本体開口部。大きな銃眼のワリに根本の開口部は400mm×490mmと小さいですね。


銃眼口から本体内部を覗いてみます。


こちらは折れた銃眼(東側)の内部。資料によると開口部の幅は最大で1.75m、高さ0.8m、奥行は3.8m。


崖から落ちた結果、90°~95°くらいかな?回転した状態になっているので底部が丸見えです。ここの砂浜は硬く締まっているので、飲み込まれるには相当時間がかかると思います。


このトーチカにも内張りの木材がたくさん残っていますが、波で少しずつ失われている様にも見えます。


中に入って見ると平衡感覚がおかしくなってきますね。


来た方角(南東)を振り返って。


こうして見ると本体の角度が結構なことに…これ以上は倒れないでと祈りつつここを離れます。


落石トーチカその2です。先程のトーチカから東に2kmくらいかな?今回が初めての訪問です。ここの地盤は固いようで、構築時のまま埋まっているようです。


銃眼だけが露出している状態。手元の資料でも全体の形状は不明となっていますが、恐らく裏側には連絡口、塹壕と続いていたと思います。


銃眼開口部の幅は最大で1.45m、高さ0.91m、奥行は5mです。奥へ行くほど狭くなっていきます。内部に動物の気配が無いことを確認!


銃眼から突入します。匍匐前進で行けるところまで進んでみましたが途中で肩が痛くなりこの辺が限界。内部がどうなっているのか見たかったのですが無理でしたw


ここはいずれ装備を整えて内部撮影に挑戦してみようと思います。


日を改め根室市光洋町にある『友知トーチカ』を探訪。10年ぶりでしたがほとんど変わった様子はありません。


友知のトーチカは2基並んで配置されており、背中合わせに東西方向を銃眼が狙っています。一基は煙突付き(写真右)で銃眼口は東側を、もう一基は煙突無し(写真左)で銃眼口は西側を向いています。


こちらは煙突が目印の『友知トーチカその1』。何度見ても釧路市桜ヶ岡にあるパルスレーダーサイト、超短波警戒機乙と言われる遺構に設置されている『煙突オブジェ』を思い出してしまいます。なお、こちらの煙突は本物の煙突だったのかも知れません。


友知トーチカの周辺は結構な湿地帯となっていますので、長靴の装備をオススメします。


ここのトーチカは埋まっておらず、むしろ浮いてきているくらいなので連絡口がちょうど良い高さで入りやすいです。


入って右、そして左へ。クランク状の通路を抜けます。


このトーチカには立派な銃座が設置されています。内張りの板も綺麗に残ってますね。


石のベッドみたいに見えますが、高さ630mmの銃座です。


内側から見た銃眼の様子。外からも確認してみます。


トーチカの前面に回り込みました。


外から見た銃眼。


友知トーチカその1の背面には『友知トーチカその2』が見えています。資料によるとトーチカ間の距離は18.8mとなっています。


カラスの監視をかいくぐり後部連絡口に接近。


『友知トーチカその2』の連絡口です。


入って右、そして左へ。その1と同じ様な造りです。


こちらにも銃座があります。内張りは無くなっており、木材には焦げたような跡が。


上部の煙突口から入る光により浮かび上がる瓦礫や空き缶に卵の殻。


この煙突穴から、カラスなんかがゴミを放り込んだのでしょうか?


友知その1には無かった通気口が右面に1箇所、左面に2箇所の計3箇所。通気口はシューターのように斜め下方向に開いています。


前面に回り込むとトーチカ底部の張り出しが見え、地面から浮き上がっているのがわかります。湿地帯だから沈まずに浮いてくるのでしょうか?


友知トーチカその2の銃眼。


2箇所の通気口も確認出来ます。友知トーチカは1箇所に2基並んでいるので、1粒で2度美味しいですw


最後は根室市桂木にあるトーチカ。10年ぶりに探訪ということでかなり迷ってしまいましたが、なんとか発見しました。車の左にある壁が視界を遮っていたため見つけるのに苦労しましたが、当時はこの壁があったかどうかは憶えてませんw


手元の資料『旧日本軍本土防衛陣地遺跡現況調査報告書(北方地域研究会)』に習って、左側を『桂木トーチカその1』、右側を『桂木トーチカその2』とします。こちらも1粒で2度美味しいトーチカw


トーチカはすぐ目の前に見えているのですが、足元に激しく生えている凶暴なハマナスを迂回するのに苦労しました。


桂木トーチカその1。銃眼は東を向いています。


銃眼です。友知と違って木材は全然残ってませんね。


こちらの背面連絡口は幅600mmと妙に狭いのが特徴です。


通路をクランク状に進んでいきます。


当然ほぼ真っ暗ですが、このトーチカは天蓋の穴からの光で薄っすら明るいです。光がゴミのようなものを浮き上がらせます。友知にあったような立派な銃座はここにはありません。


天蓋にある穴。ここからカラスがゴミを?人間が持ち込んだのかも知れませんが。


内部から見た銃眼。ここの銃眼はちょっと小さ目かも知れません。


桂木トーチカその1の背面。現代の風力発電の風車と、77年前のトーチカとの2ショット。基本的に直方体だった友知トーチカと違い、複雑な形になっているのも桂木トーチカの特徴でしょうか。


こちらは桂木トーチカその2。トーチカの間隔は27mです。


桂木のトーチカ周辺は、友知と比べると相当な湿地となっています。履いていた長靴でギリギリでした。


いろいろと迂回しながら桂木トーチカその2に到達。銃眼は西~やや南西を向いています。当時は銃眼の横に壁が立っていたようですが今は半分崩れています。


部分的に金属が入っているのでしょうか。錆びて露出しています。


連絡口は銃眼に対して側面にあります。


桂木トーチカその2には分厚い庇のようなものがついてます。同じ場所にあるのに桂木その1とは形が全然違いますね。


内部へ。部屋が2つに別れています。


左の部屋は弾薬などの一時保管場所かな?右が銃眼のある部屋になります。


左の弾薬庫。壁の緑色はカビでしょうか?ペンキ??


右の銃眼部屋。こちらのトーチカにも銃座はありません。


例によってゴミが散乱しています。


ゴミの真上には穴があいてます。ほとんどが貝類ということはカラスの仕業でしょうね。


上部の通気口。カラスが貝を割るために上空から落としてトーチカにぶつけたものが入ってしまったのでしょう。平和利用されていますw


内部から見た銃眼です。


根室のトーチカでは桂木トーチカその2が一番複雑な造りになっています。オススメ!


帰りにはまた荊棘の道を迂回するのか…と思っていたら先人が残した踏み跡を発見。迂回しなくても楽々戻ることが出来ましたw

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