昭和炭鉱跡(沼田町)2021

2021年11月3日水曜日

炭鉱(昭和)

t f B! P L
北海道雨竜郡沼田町にあった1969(昭和44)年閉山の明治鉱業昭和炭鉱。閉山から50年以上経過してもなお、炭鉱施設はまだまだ形を保ち続けています。今回で3度目になりますが、炭鉱住宅アパート群、隧道内部マーケット、選炭場を探訪しました。
林道の一部が崩落しているためか、いつも施錠されている昭和二股林道のゲート。ここから徒歩で約4km、まずは炭鉱住宅アパート群を目指します。


今回で3度目となる訪問はまだ雪が積もる前。前回の猛吹雪と違って穏やかな天候ではありましたが、ここ数年、全道的に熊の出没が増加傾向にある昨今。物騒な野生動物に遭遇しないよう、いつもより慎重に歩を進めて行きます。


30分経過。いつものメンバーに新メンバーも加わって賑やかに進行中w


徒歩40分、遺構が見えてきました。


あっという間にアパート群に到着、徒歩開始から1時間でした。前回は膝下までの積雪&絶賛降雪中だったため同じ距離なのに2時間かかりました。その上疲労による股間の激痛に悶えながら歩いたことに比べると今回は余裕っすw


数年ぶりにアパートとご対面です。そんなには変わってない印象。


相変わらず枯れ木や枯れ草が生え放題なので写真が撮りにくいです。


アパートの裏側を確認。水が溜まってます。


北海道有数の豪雪地帯にありながら50年経っても窓の木枠が残っていました。


木枠どころか小窓にはガラスも割れずに残っています。


いずれは植物で覆われ森に飲み込まれてしまうのでしょうか。


外壁の一部が剥がれ落ち、ブロックが剥き出しになっています。森に飲み込まれるより先に建物が保たないかも知れません。


アパートの内部。内壁が無くなりコンクリートブロック剥き出しになった部屋。下地の木材がちょこちょこと残っていますね。


こちらの部屋は比較的綺麗な状態で押し入れが原型を留めています。昔住んでいた家を想起させます。


白華現象による鍾乳石が時間の経過を物語っています。


この壁には下地の木材がまだ残っていますね。石膏ボード?の破片も見られます。


殺風景な中でひと際目立つ鮮やかな水色のクロスシート。


階段は苔に覆われています。


階段の踊り場からは向かいのアパートが見えます。


窓枠の骨組みが綺麗に残っていますね。


アパートの周辺は小川が流れていたり段差があったりと、草木も多いので移動には注意を要します。他の棟も見ていきます。


炭鉱住宅アパート群は全部で9棟か10棟ほど遺っていますが、現地では闇雲に見て回っているのでどこがどの棟か全く記憶にありませんw


こちらには玄関ドアが残っています。当時どんな玄関だったのか何となく雰囲気がわかりますね。


建物によっては崩壊がかなり進んだものもあるので、安全に入れそうな棟を探します。


この部屋では天井が崩れ落ちかけていて、なんとか引っかかってる状態です。


壁に大穴が開いて鉄筋が剥き出しになっています。自然に開いた穴とは思えませんが、解体を試みた名残でしょうか??


踏面が苔で覆われた階段を登っていきます。


折り返し階段の踊り場から他の棟を眺めます。どの建物も屋根は失われています。


既に天井も壁も無い2Fから見える風景です。他の棟と崩壊具合が違うのは、やはり解体しかけた??


足元に気をつけながら階段を下ります。


炭鉱住宅アパート群の端まで到達しました。今回は行ってませんが、ここから更に奥へ進むと1棟だけ遺されたアパートとプール跡が遺っています。(参考:昭和炭鉱2015


これは浴槽の跡。


ここには中央浴場があったようです。


アパートから徒歩数分で行ける浴場ですね。この壁は男湯と女湯を仕切るものかな?


というわけで1時間ほどアパート群を見学し、次は隧道マーケットを目指します。隧道マーケットとは文字通り隧道(トンネル)の中にある商店街のこと。山奥の豪雪地帯においても天候に左右されず営業出来るようトンネル内にマーケットを展開、往時には10軒ほどの商店が並んでいたようです。詳細は不明ですが、マーケットのためだけに掘ったトンネルとも思えませんので、廃線跡の隧道を利用したのかも知れません。


出典:国土地理院ウェブサイト https://maps.gsi.go.jp/
左が1977年の航空写真、右が坑外図です。隧道マーケットは選炭場の近くですね。アパート群と隧道マーケットの位置関係ですが、『炭住アパート群』は恐らく上記地図中央の「右本町」「左本町」で、すぐ近くに『隧道内部マーケット』があったようです。ちなみにアパート群を「右本町」「左本町」とした根拠については、以下の合成写真になります。


地図をベースに縮尺を雰囲気で合わせ、写真を右に45度くらい回転。選炭場付近の道や稜線もだいたい合ってるので、間違いないハズです!w アパート群の建物9棟がピッタリ「右本町」「左本町」の位置にありますよね。


というわけでアパート群から来た道を少し戻り、隧道マーケットに到着です。川の向こうの入口へ行くには、幌新太刀別川を渡らなければなりませんが、この日は長靴でなくても渡れる程の水量でした。元々は橋が架かっていたのか、土台がいくつか転がっています。


野生動物の気配を確かめながら慎重に入口を窺います。足元には、数年前まであった木製の扉が横たわっています。


入ってすぐ、毎回出迎えてくれるお口の恋人。隧道マーケットにあったお菓子屋さんのものでしょうか。


入坑の準備を整え内部へ。以前は湿気が凄かったのですが今回はそれほどでもありません。


暗い隧道を進みますが、持ってきたライトの電池交換を忘れていたので不安な明るさです。


進むにつれ暗さが増してきます。


天井にぶら下がる小さなコウモリ。バッテリー不足のライトには全く反応しません。


店舗内ですが…暗くて何だかわかりませんね。


再び天井のコウモリ。先程より3倍に増えてますが、どのコウモリもライトに反応しません。


予備で持ってきたライトを使ってみると、光色が違うので黄色と白がミックスされてしまいました。いろいろ面倒くさいのであまり好きじゃない内蔵ストロボ撮影へと切り替えることにします。


フラッシュで撮ってみるとこんな感じ。好みではありませんが見易いですねw マーケットゾーンに入ると、少し天井が高くなっているのがわかります。


お菓子屋さんです。黄色い缶には「森山の菓子」、赤い缶には「MILK・CANDY Vigour」と書いあります。


隣のお店には「ピアンコチョコレート」。


店の前にはシャッターというか、トタンが転がっています。


各商店はトンネルの片側だけに並び、10店舗ほどあったと言われます。廃線隧道の再利用だったとして、片側の壁をわざわざ壊して拡張し、コンクリートブロックを積んで店を造ったのでしょうか?


ここは魚屋さんのショーケースっぽいものがあるので鮮魚店ですかね。


店の看板らしいものが取り付けられていますが、文字は消えてしまっています。


電気も通っていたようですね。何気にコウモリがぶら下がってますが、フラッシュにも反応してくれませんでした。


ショーケースには化粧タイルがまだ残っていますね。


商店と逆側の壁に『トンネル待避所』っぽいものがあります。ここはやはり廃線隧道なのでしょう。


このシャッターというかトタンの扉に書かれた謎の矢印は何でしょうか?


欠円アーチの隧道にマーケットが並びます。


店の扉には閉山に反対するビラがいくつも残っています。閉山は1969(昭和44)年。現在は無人となった集落には、最盛期4000人ほどが暮らしていたそうです。


呉服店の看板。前回見てから数年経っていますが、変わらずここにありました。


マーケットはもう少し続いていますが、水が溜まっているのでここまでです。長靴で来ればもう少し行けたのですが、歩きにくいし疲れるしで今回は置いてきました。


ここでも閉山反対のビラが確認出来ます。閉山となってしまうと山奥の集落では暮らして行けず故郷を離れてしまうことになり、やがて消えていきます。


高度経済成長期を支えた石炭でしたが、その後エネルギー革命は加速、石油が主役へ取って代わります。北海道では、昭和43年頃から大手企業の閉山が進んで行きました。結果、同じように消えた故郷が多数あります。


今回も無事に見学することが出来ましたので、そろそろ入口に向かうこととします。この隧道マーケットを通し、ここで暮らしていた人々の活気が伝わってくるような気がしました。


戻りがてら店舗の状況を良く見ると、壁には結構なクラックが入っています。


トンネルの路盤隆起も見られ、かなり危険な感じです。


この辺りが特にトンネル幅が狭くなっているように見えます。


ここは部分的に崩落し、壁から土砂が流入しています。


なんと逆側の壁からも土砂流入が見られます。年々、危険度は増しているようです。


あと何年、外からの圧力に耐えることが出来るのだろうか?などと考えながら出入口に向かいます。


ふと足元を見ると、何かの鉄管が隧道内に引き込まれていました。水道管でしょうか?


最後は選炭場です。石炭ホッパーと思われる遺構の内部。


木製の扉が残ってますね。


この辺り、何となくですが獣の臭いを感じました。気のせいかな。


上から何が落ちてくるかわかりませんので、ホッパーの下は頭上注意です。


石炭積み出し施設としてはそんなに大きなものではありませんが、コの字になっていて同じようなホッパーを2つ備えているようです。


ここのホッパーも上屋は既に無くなっており、穴からは空が見えます。今も上屋が遺ってるのは住友奔別炭鉱くらいかな?


選炭場の斜面を登ってみます。何かはわかりませんが、いろいろと遺構が見られます。


ブロック塀?のようなものまでありますね。


これも何の遺構かはわかりませんが、結構高いところまで設備があったようです。


斜面から見下ろしてみます。


これは多分先程のホッパーですが、相変わらず草木が多すぎてよくわかりません。


足元には謎の金属片があります。


どんな環境でも逞しく成長する植物が、じわじわと遺構を覆い隠そうとしています。


柱は細く、心なしか頼りなく見えますが、骨組みだけになりながらも遺っています。今回は選炭場の奥にある浴場跡まで行きたかったのですが、ここにきて実は他のメンバーも獣の臭いを感じていたことが発覚。さほど強い臭いではありませんでしたが、これ以上の探索を断念することにしました。遺構探索においては危険回避能力・行動が重要になります。無理はしません。


警戒モードに移行しつつ帰路につきます。


ちょっと物足りなかったのですが仕方ありませんね。退却です。


帰り道、いつの間にか逃亡していた100円ライターをここで発見。どこで失くしたんだろうと思ってましたがこんな所で落としていたとは。


逃亡者を無事確保w


…などと遊んでいるうちにゲートが見えてきました。あの臭いの正体は、今となってはわかりませんが今回も無事に帰還いたしました。


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遺構については個人が趣味の範囲で調べたものですので、必ずしも正確なものではありません。また、当ブログでは熊などが生息している危険な場所を扱うことがありますが、探索を推奨するものではありません。なお、当ブログを見て何らかのトラブルに巻き込まれても当方は一切責任を負いません。

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