北海道雨竜郡沼田町にあった1969(昭和44)年閉山の明治鉱業昭和炭鉱。閉山から50年以上経過してもなお、炭鉱施設はまだまだ形を保ち続けています。今回で3度目になりますが、炭鉱住宅アパート群、隧道内部マーケット、選炭場を探訪しました。
林道の一部が崩落しているためか、いつも施錠されている昭和二股林道のゲート。ここから徒歩で約4km、まずは炭鉱住宅アパート群を目指します。
今回で3度目となる訪問はまだ雪が積もる前。前回の猛吹雪と違って穏やかな天候ではありましたが、ここ数年、全道的に熊の出没が増加傾向にある昨今。物騒な野生動物に遭遇しないよう、いつもより慎重に歩を進めて行きます。
30分経過。いつものメンバーに新メンバーも加わって賑やかに進行中w
あっという間にアパート群に到着、徒歩開始から1時間でした。前回は膝下までの積雪&絶賛降雪中だったため同じ距離なのに2時間かかりました。その上疲労による股間の激痛に悶えながら歩いたことに比べると今回は余裕っすw
炭鉱住宅アパート群は全部で9棟か10棟ほど遺っていますが、現地では闇雲に見て回っているのでどこがどの棟か全く記憶にありませんw
こちらには玄関ドアが残っています。当時どんな玄関だったのか何となく雰囲気がわかりますね。
建物によっては崩壊がかなり進んだものもあるので、安全に入れそうな棟を探します。
この部屋では天井が崩れ落ちかけていて、なんとか引っかかってる状態です。
折り返し階段の踊り場から他の棟を眺めます。どの建物も屋根は失われています。
既に天井も壁も無い2Fから見える風景です。他の棟と崩壊具合が違うのは、やはり解体しかけた??
足元に気をつけながら階段を下ります。
炭鉱住宅アパート群の端まで到達しました。今回は行ってませんが、ここから更に奥へ進むと1棟だけ遺されたアパートとプール跡が遺っています。(参考:昭和炭鉱2015)
というわけで1時間ほどアパート群を見学し、次は隧道マーケットを目指します。隧道マーケットとは文字通り隧道(トンネル)の中にある商店街のこと。山奥の豪雪地帯においても天候に左右されず営業出来るようトンネル内にマーケットを展開、往時には10軒ほどの商店が並んでいたようです。詳細は不明ですが、マーケットのためだけに掘ったトンネルとも思えませんので、廃線跡の隧道を利用したのかも知れません。
![]() |
出典:国土地理院ウェブサイト https://maps.gsi.go.jp/ |
左が1977年の航空写真、右が坑外図です。隧道マーケットは選炭場の近くですね。アパート群と隧道マーケットの位置関係ですが、『炭住アパート群』は恐らく上記地図中央の「右本町」「左本町」で、すぐ近くに『隧道内部マーケット』があったようです。ちなみにアパート群を「右本町」「左本町」とした根拠については、以下の合成写真になります。
地図をベースに縮尺を雰囲気で合わせ、写真を右に45度くらい回転。選炭場付近の道や稜線もだいたい合ってるので、間違いないハズです!w アパート群の建物9棟がピッタリ「右本町」「左本町」の位置にありますよね。
というわけでアパート群から来た道を少し戻り、隧道マーケットに到着です。川の向こうの入口へ行くには、幌新太刀別川を渡らなければなりませんが、この日は長靴でなくても渡れる程の水量でした。元々は橋が架かっていたのか、土台がいくつか転がっています。
入坑の準備を整え内部へ。以前は湿気が凄かったのですが今回はそれほどでもありません。
予備で持ってきたライトを使ってみると、光色が違うので黄色と白がミックスされてしまいました。いろいろ面倒くさいのであまり好きじゃない内蔵ストロボ撮影へと切り替えることにします。
フラッシュで撮ってみるとこんな感じ。好みではありませんが見易いですねw マーケットゾーンに入ると、少し天井が高くなっているのがわかります。
店の前にはシャッターというか、トタンが転がっています。
各商店はトンネルの片側だけに並び、10店舗ほどあったと言われます。廃線隧道の再利用だったとして、片側の壁をわざわざ壊して拡張し、コンクリートブロックを積んで店を造ったのでしょうか?
店の扉には閉山に反対するビラがいくつも残っています。閉山は1969(昭和44)年。現在は無人となった集落には、最盛期4000人ほどが暮らしていたそうです。
マーケットはもう少し続いていますが、水が溜まっているのでここまでです。長靴で来ればもう少し行けたのですが、歩きにくいし疲れるしで今回は置いてきました。
高度経済成長期を支えた石炭でしたが、その後エネルギー革命は加速、石油が主役へ取って代わります。北海道では、昭和43年頃から大手企業の閉山が進んで行きました。結果、同じように消えた故郷が多数あります。
今回も無事に見学することが出来ましたので、そろそろ入口に向かうこととします。この隧道マーケットを通し、ここで暮らしていた人々の活気が伝わってくるような気がしました。
戻りがてら店舗の状況を良く見ると、壁には結構なクラックが入っています。
なんと逆側の壁からも土砂流入が見られます。年々、危険度は増しているようです。
あと何年、外からの圧力に耐えることが出来るのだろうか?などと考えながら出入口に向かいます。
木製の扉が残ってますね。
この辺り、何となくですが獣の臭いを感じました。気のせいかな。
上から何が落ちてくるかわかりませんので、ホッパーの下は頭上注意です。
これは多分先程のホッパーですが、相変わらず草木が多すぎてよくわかりません。
足元には謎の金属片があります。
どんな環境でも逞しく成長する植物が、じわじわと遺構を覆い隠そうとしています。
柱は細く、心なしか頼りなく見えますが、骨組みだけになりながらも遺っています。今回は選炭場の奥にある浴場跡まで行きたかったのですが、ここにきて実は他のメンバーも獣の臭いを感じていたことが発覚。さほど強い臭いではありませんでしたが、これ以上の探索を断念することにしました。遺構探索においては危険回避能力・行動が重要になります。無理はしません。
…などと遊んでいるうちにゲートが見えてきました。あの臭いの正体は、今となってはわかりませんが今回も無事に帰還いたしました。